清明の節句(4月4日)が終わり、穀雨の節句(4月20日)の前に茶摘みを終えて、鄭添福茶師は阿里山にある、山深い「老吉子(ラオチーズ)茶場」にこもり、全知全霊を注いで製茶に励みます。
午前10時から開始し、日が暮れるまでの間、5~6度にわたって製茶工程を繰り返します。持ち込まれる茶葉は育った畑の土の違い、気候、茶摘みの時間、また茶を摘む人により、茶の品質に大きく影響するのだそうです。
鄭茶師は、目で見て、茶葉を揉み、そして茶の香りを感じれば、永年の経験と勘で、そのような茶葉な品質の違いを見極め、それに最適な製茶の方法を選んでいきます。
日光萎凋(にっこういちょう)の時間、屋内での静置攪拌の程度そして殺青(さっせい)の具合などを整えながら揉み上げて行く! そして鄭茶師は次のように語ります。
「製茶には3つの心が要るのです。それは細心(さいしん)、愛心(あいしん)、耐心(たいしん)です」と。 日光萎凋の最中に霧雨が降ってきたならば、茶葉を屋内に移し、茶葉に湿気が着くのを防ぐ。日の光りが強すぎるならば、茶葉の葉脈が焦げてしまうので、日の光りを和らげる為に茶葉の上にネットを張り巡らし、これを防ぐ。
それぞれの茶葉をよく観察し、メモを取り、静置と攪拌のタイミングを決めていく。これこそ茶師の、腕の見せ所!!ちなみに普通の農家の方だったら、なんとなしの感覚で対応するところを、ここにも鄭さんの『3つの心』が生きています!
静置はいわゆる、茶葉の睡眠の時間!静かに呼吸し、ゆっくりと、そして確実に発酵が進んでいきます。まるでカステラが出来あがる時の様に、空気を吸い込んでふっくらとし酸化が進んでいくのですね。
一方、攪拌は、いわゆる茶葉が起きて活動している時間! ふるい籠の中で生命を持った生き物のようで、鄭茶師の手元はまるで赤子をかわいがるがるかのように優しく、愛情一杯に揉みこんでいきます。
これこそ、まさに『3つの心』ですね! |