カリスマ茶師 鄭さん

(2001.7.台湾・阿里山 電脳茶師)


鄭添福茶師とは、台湾茶で一番人気の産地、阿里山を代表する茶師です!品評会では5回の特頭賞(第1位のこと)、10回の頭等賞を受賞したバケモノのような有名人!その信頼性から、台湾実力No.1の茶芸舘・紫藤廬(ツートンルー)へもお茶を卸し販売をしている実力派です。 

 

  肉厚のある青心烏龍茶

製茶の華!茶摘!

烏龍茶は一針三葉で摘む!

茶葉を均等に分けてく

茶葉をチェック♪

細心・愛心・耐心な作業

清明の節句(4月4日)が終わり、穀雨の節句(4月20日)の前に茶摘みを終えて、鄭添福茶師は阿里山にある、山深い「老吉子(ラオチーズ)茶場」にこもり、全知全霊を注いで製茶に励みます。

午前10時から開始し、日が暮れるまでの間、5〜6度にわたって製茶工程を繰り返します。持ち込まれる茶葉は育った畑の土の違い、気候、茶摘みの時間、また茶を摘む人により、茶の品質に大きく影響するのだそうです。
鄭茶師は、目で見て、茶葉を揉み、そして茶の香りを感じれば、永年の経験と勘で、そのような茶葉な品質の違いを見極め、それに最適な製茶の方法を選んでいきます。
日光萎凋(にっこういちょう)の時間、屋内での静置攪拌の程度そして殺青(さっせい)の具合などを整えながら揉み上げて行く!

そして鄭茶師は次のように語ります。
「製茶には3つの心が要るのです。それは細心(さいしん)、愛心(あいしん)、耐心(たいしん)です」と。

日光萎凋の最中に霧雨が降ってきたならば、茶葉を屋内に移し、茶葉に湿気が着くのを防ぐ。日の光りが強すぎるならば、茶葉の葉脈が焦げてしまうので、日の光りを和らげる為に茶葉の上にネットを張り巡らし、これを防ぐ。
それぞれの茶葉をよく観察し、メモを取り、静置と攪拌のタイミングを決めていく。これこそ茶師の、腕の見せ所!!ちなみに普通の農家の方だったら、なんとなしの感覚で対応するところを、ここにも鄭さんの『3つの心』が生きています!

静置はいわゆる、茶葉の睡眠の時間!静かに呼吸し、ゆっくりと、そして確実に発酵が進んでいきます。まるでカステラが出来あがる時の様に、空気を吸い込んでふっくらとし酸化が進んでいくのですね。
一方、攪拌は、いわゆる茶葉が起きて活動している時間!
ふるい籠の中で生命を持った生き物のようで、鄭茶師の手元はまるで赤子をかわいがるがるかのように優しく、愛情一杯に揉みこんでいきます。

これこそ、まさに『3つの心』ですね!
 

まるで赤子を可愛がるように

優しく♪優しく♪

茶葉の睡眠の時間

どれどれ、香りは如何に?)

乾燥させて発酵をストップ!

中はこんな感じ(^-^)

彼は次にようにも言っています。
「茶は私の心の中に確実に生きている。私の手のひらの中では、茶は農産品ではなく、商品でもない。これはわたしの生命であり、芸術です。生活と精神の延長線上のものです」

ふるい籠の茶葉を持ち上げ、ふるい落とす鄭茶師の呼吸が茶葉に伝わり、呼吸が1つになってゆく。
「私は茶葉に優しい刺激を与え、ゆっくりと攪拌を繰り返します。茶葉はこれに従い、ゆっくりと水分をはきだしていく。力を入れすぎたり、粗雑に扱うと茶葉は苦味、渋みを出してしまうのさ!」

鄭茶師は、茶摘みの時期には誰よりも早起きします。そして明け方の薄明かりの中、茶畑の中を巡り歩き、その日に茶摘みをする茶木の夜露を払い落とし、新芽が夜明けの光を浴びやすいようにしています。これも『3つの心』の現れです!

10時頃に茶摘を開始し、午後2時頃までに終わらせる。この間に採茶された物は最も光合成が進んだ最も良質な茶葉。続いて薄靄のなかで日光萎凋に移り、屋内萎凋、攪拌へと移ります。この時間は最も精神が安定し、集中する時間だそうです。
茶葉の息づかいを見て、風通しに気を配り温度調整をする。細心沈着な判断を以って、6名の弟子をリードして茶葉を作っていく。

「茶業はいかに近代化しようとも、例え台湾がWTO(自由貿易機構)に加盟して後進国の追い上げに合おうとも、手作りの感覚は絶対に忘れてはいけない」

人が呼吸しているように茶葉も呼吸している。野山を駆け巡る鶏の肉は、養鶏場の鶏肉より遥かに良いのと同じように、手摘みで一芯三葉をていねいに摘み取るのだ。

いつも落ち着き、いつも真面目で几帳面な鄭さん。しかし、その瞳の奥にある、茶葉にかける情熱は半端なものではない!!
「やはり、おいしいお茶には訳がある!」のですね。
 

数秒の狂いもなく!!

茶葉の水分量はどれくらいかな?

布に包んで揉み込む!

おいしいお茶が出来ました。
参考文献
<NEWIDEA(台湾の雑誌)6月号>



珍夜特急  〜彩香の買い付け日記〜
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