茶器の都 宜興

(2001.7.宜興 ラオバン)


中国茶器随一の町、宜興(ぎこう)への出張は、もうこれで4度目となる。
上海駅8時発【T714南京行き】特別快速は、上海を出るとノンストップで無錫(むしゃく)まで1時間ほどで到着する。この列車を逃してしまうと、他の快速は1時間40分掛もかってしまう。だから、上海から宜興への日帰り出張は【T714】に限るのだ。

そして、無錫からバスで約1時間半かけて宜興に到着。路線バスだが道中客を拾って行くので到着時間は若干遅れてしまう。そして、バスセンターでタクシーを拾い、赤レンガが立ち並ぶ茶壷(急須)の産地である丁蜀鎮(ていしょくちん)に到着。


この丁蜀鎮(ていしょくちん)は、中国随一の茶壷の産地だ。大作家がひしめきあっていると言われていて、この地は千数百年の歴史を刻んできた。

こんな大産地からどうして良い商品を安く仕入れたらいいのだろう。過去3度の仕入商談は隔靴掻痒の感があった。偉大過ぎて、こちらのペースで商談するのが大変難しいのだ。我が方の力不足で商品に対する値踏みが、売り手とどうしても食い違ってしまうのだ。

彼我の文化の違いかと思い悩みながら、今度こそと日本の雑誌などを見せたりして、日本のマーケット事情を説明した。




ところが予想に反して、今回は相手の反応がとても良いのだ。出てくるサンプルも希望の商品に近く、「これは行けそうだ!!と唸った。

話を聞くと、これが今の流行なのだという。2年前に初めて足を踏みいれて以来、宜興の動きが徐々に変化し始めていたのだ!

最初来た頃の宜興は、手作りだからと芸術的価値のみが強調され、実用に向かない商品ばかりを買い込んで店長からは総スカンをくらい、長い間傑作ばかりが倉庫に眠っている有様で、宜興は鬼門だなあと若干敬遠ぎみだった。



しかし回を重ねるにつれて、産地の性格がだんだん分かって来たらしい。この産地にも新しい風が吹き始めていたのだ。

マーケット無くして産地なし、という経済原則は容赦なく、茶器の町・宜興を変革へと走らせている。
多くの偉大な作家を抱えている有名工場は経営難に陥り、芸術性を離れ、実用第一の優良製品を安く作る所は伸びている。



珍夜特急  〜彩香の買い付け日記〜
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