アモイにてコウさんと

(2001.7.宜興 ラオバン)




上海から南へ1時間20分余り飛行機に揺られると、福建省の港町、廈門(アモイ)にたどり着く。 アモイは昔からヨーロッパや日本への中国茶の輸出を支えてきた。日本人が好む中国大陸(台湾以外)ウーロン茶のほとんどがここ、アモイから横浜や神戸に届けられる。貧しい省の福健省の中では近代化が飛びぬけて進んでいる。


現在、対岸の台湾が資本の最大の投資先にもなっている。この事は茶業界も同様の事で、台湾資本の茶園もあり、台湾式茶芸も盛んになってきている。台湾の金宣茶や東方美人などの銘茶も作られている。お茶作りの環境、人件費を考えると、福健省がベストなようだ!

茶芸舘には、鉄観音、武夷山・岩茶(ぶいざん・がんちゃ)に混じって、台湾の凍頂烏龍茶、阿里山金萱茶などが目立っている。
地元、「アモイっ子」にとっては、アモイから1時間半余りで行ける安渓(あんけい)産の鉄観音が『おらが国の茶』で、世界一の烏龍茶だと思って疑わないようだ。

左はアモイに出来た台湾系の新しい茶芸館。



小生の10数年来の朋友<パンヤオ>(友達)で、生粋のアモイっ子の侯(コウ)さんは鉄観音の名前の由来をこう話してくれた。

「約300年程昔、清の名君として知られる乾隆帝(けんりゅうてい)が福建の地を巡幸の折り、喉の乾きを覚えて茶葉を取り寄せさせた。この茶の茶葉の厚みに驚いて家来にはかりを持って来させ、計ったところ、他産地のものに比べて3割も重かったという」

「皇帝はこれを鉄の様に重いと誉めて、さらに乾燥し終わった茶葉の形を見て、まるで観音様のような色、形をしていると称え、その香りと味をとても気に入られた。そしてこのお茶に【鉄観音(てつかんのん)】と言う名を与えよ、と命じられた」
と言うのだ。

「安渓では、どうしてそんな良いお茶が取れるのか?」と小生が質問すると、ここで侯さんの話が熱をおびてきた。

「鉄観音は1000m級の峰が連なる安渓、西坪地区だからこそ、いいお茶として育つのだ。1年365日の内265日は山に霧がかかっており、茶葉の育成にとても良い環境を作り出す。
茶の葉は根から水分を吸収するのではなく、葉から水分を取るので、安渓の茶葉は一年中霧から水分を吸収し、葉は肉厚になり、良い土質の有機成分が根から吸い上げられ、栄養分に富んだ香り高く、旨い茶葉が出来あがるのだ」

・・・と言うことだ。なるほど...。


烏龍茶の王者の風格あり?と言うところだ。

中国大陸烏龍茶の3大産地【武夷山(ぶいざん)、安渓(あんけい)、鳳凰山(ほうおうざん)】の中では、最も烏龍茶の生産量の多い安渓。
だが、他の産地がいろんなお茶の名前を付けて売り出しているのにもかかわらず、ここ安渓では鉄観音の他に黄金桂があるのみで、あくまでも鉄観音一本で勝負するという自信にあふれる銘柄なのだ。

明日、安渓の茶王受賞茶師の林震源師の待つ産地を訪問して、その自信の証を探って見るつもりだ。

おっ、早速林茶師の甥っ子さんが安渓から迎えに来られた。さぁ、安渓までレッツゴー!!



珍夜特急  〜彩香の買い付け日記〜
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