<前回の続きです>
台湾茶業界では有名な陳さんが、「最近の台湾茶はドンドン醗酵度が低くなっている・・・」、「品評会受賞茶は、外見と茶水の色ばかりに気を使っているお茶だ」、「品評会で1位をとれる為の作り方をしているんじゃないか・・・」 という風に、品評会と共に成長してきた現状の台湾茶に警鐘をならしております。
なるほど、とうなずく部分も多い話なのですが、彩香でもう3年来のお付き合いのある鄭茶師の事を批判しているんじゃないかな?と邪推しなくもありませんでした。
だって鄭茶師は品評会では常勝ですし、茶葉も陳さんご指摘のお茶とよく似ていて、茶葉は若い芽を使い、葉はキレイ、醗酵度も低いですから・・・・。 もちろん陳さんは、鄭茶師のことを名指しで批判するようなことはしておりません。
ですが、両者を知っている私はそのように感じてしまうんです。 で、私は醗酵度の低い昨今の台湾茶に疑問を感じる人がいることを、陳さんの名前はもちろん伏せて、鄭茶師に話してみました。もちろん失礼に当たらないようにやんわりと・・・。
今日はその時のお話です!
|
おなじみの鄭添福茶師 | |
特等賞受賞時の様子 | |
事務所には盾や賞状が所狭しと並びます | |
アマ | 「鄭さん、いつもおいしいお茶をありがとうございます。ところで、鄭さんのお茶はなんで品評会で
そんなに賞を取れるんでしょう?何か、品評会で賞を取るために工夫されているんですか?」 |
鄭茶師 | 「天野さん、私は品評会でお茶をとるためにお茶作りしている訳ではないのですよ。良いお茶を作るのは、お茶との対話だと思ってます。
茶葉は育った畑の土の違い、気候、茶摘みの時間などをよく考慮して茶葉を揉み、そして茶の香りを感じられて、それに最適な 製茶の方法を選んでいくのです。
他の製茶師は、だいたいの感覚でやっている。 まぁ、適当にやっているってことです。 しかし、私は違います。それが、基本的だけど大きな違いなんです。
私の父は文山包種茶の産地、坪林(ぴんりん)でも有数の製茶師でした。そこで私は、小さい頃から製茶をしてます。長年の経験によるものです」 |
ここで失礼とは思いつつ、あえて質問をしてみました。
アマ | 「鄭さんのお茶は醗酵度が低過ぎるかな?と思うんですが・・・」 |
鄭茶師 | 「僕はね、最高のお茶を作ることにチャレンジしたかったんですよ。
最高の環境で作りたかったから、文山包種茶で成功したお金で、阿里山の茶畑を買ったんです。それが、私のチャレンジ。そして人と違うお茶を作りたかった!
醗酵度の低いお茶を作るのは、本当に難しい。茶葉をあんまり加工しないで作るから、非常に繊細な仕事が、熟練が必要です。 しかし私は、坪林(ぴんりん)で文山包種茶を作っていた経験があるから、醗酵度の低いお茶が得意なんです」
(注)坪林で産する文山包種茶は、醗酵度が非常に低いんです。
「その技術を生かしつつ、阿里山で茶葉の良さを一番引き出せるのは今、私が作っている烏龍茶なんです。悪いけど、他の人には私のお茶は作れませんよ!」
| | |
アマ | 「なるほど、鄭茶師が阿里山で醗酵度の低いお茶を作るのは、昔、坪林(ぴんりん)で文山包種茶を作っていた経験に依る
ところが大きいんですね。 だったら、品評会で賞をとる為にお茶を作っ ている訳では全然ないんですね ・・・」 |
鄭茶師 | 「はっはっ、私は新しいお茶作りにチャレンジしているんですよ。誰も作った事の無いお茶を生み出しますよ!」
| |
陳さんは、「品評会で賞をとる茶師は品評会で賞をとれるようなお茶の作り方をしている」とおっしゃっていましたが、こと鄭茶師に関しては違うようです。
新芽でお茶を作るのは、小さい頃から父と一緒に坪林(ぴんりん)で文山包種茶を作っていたから。醗酵度が低い、文山包種茶の作り方を生かして、阿里山の烏龍茶を作っているということなんですね。
昔、陸上の練習ばかりをしていた陸上選手がサッカーを始め、鍛えた脚力をうまくサッカーに生かしている・・・。 品評会で特等賞を何度も受賞する鄭茶師は、そんなイメージです。
|