正宗木柵鉄観音を求めて

(2004.5.台湾 スタッフ和田)



木柵鉄観音の名茶師 【林黄舜茶師】
製茶工程の最終段階「ホンペイ(茶葉を籠に入れじっくりあぶる作業)」 が得意なんですって。すご〜く優しい方でした。

住所を写し間違えていたことに気付かず、木柵の山の中をぐるぐる周って、やっと林黄舜茶師夫妻のいる茶荘にたどり着きました。
お店に入るなり、「昨夜から胃が痛むので余り試飲できないんです」と言う私に、林茶師の奥様は走って胃薬と麻醤面(ゴマを絡めた麺)を買ってきてくださいました。

「ご飯を食べずにお茶ばかり飲んでいてはダメ。お茶を飲む前には澱粉を取ると良いの」

突然の「珍客」に、こんなにも優しくしてくださる…。感謝の気持ちと申し訳ない気持ちで胸がいっぱいになりました。
美味しそうな麺の入ったお碗を手に、たじたじ…。

林黄舜茶師はにっこり笑顔で言います。
「大丈夫、この木柵鉄観音は胃を刺激しないから安心して」


木柵鉄観音の苗木には鉄観音種、梅占、佛手、水仙、奇蘭、四季春など何種類かあります。その内「鉄観音種」から作られる木柵鉄観音を、【正宗木柵鉄観音】と呼びます。【正宗】は日本語の「正統」にあたります。

林茶師は子供に話を聞かせるように、優しく指導してくださいました。



「どんなお茶を売っても良いけれど、売り手はお茶のことを知り尽くしていなければいけないよ。」と、林茶師は言います。

林茶師「どういう風にお茶を入れるのが一番美味しいか、貴方にはわかりますか?」

「...。」返す言葉が見つかりません。

林茶師「お茶を本当に理解しているならマニュアルなんかいらない。茶葉を見ただけでお湯の温度、蒸らす時間が決まります。
但しテイスティングする時は別。茶葉を4g、熱湯を注いで蒸らし時間3分間。
買い付けの際は茶葉3g蒸らし時間は6分間で。茶葉の特徴や悪い所が見つけやすくなります」

林茶師は2種類の正宗木柵鉄観音を(中火でホンペイしたものと弱火でホンペイしたもの)を出してくれました。
林茶師の講義は続きます。

林茶師「大陸の鉄観音は台湾の鉄観音とは違います。
大陸の鉄観音は何煎重ねても味と香りは一定。台湾の鉄観音は煎を重ねるごとに味、香りが変化します」


毎煎違った香りを特徴とする台湾の鉄観音...。
恐るべし、木柵鉄観音!



左が正宗鉄観音中火、右が正宗鉄観音軽火の茶葉。右の茶葉の方が淡い色をしています。ホンペイにかかった時間は同じで火の強さが違うそうです。 火加減が難しいと林茶師は言います。

【1煎目】同じく左が正宗鉄観音中火、右が正宗鉄観音軽火の茶湯。右の湯色の方が淡い色。
左:とろっと柔らかい舌触りに炭火の香り。
右:すっきり軽い口当たりに花のような香り。

【2煎目】左が正宗鉄観音中火、右が正宗鉄観音軽火の茶湯。
左:花の甘い香りが出てきました。
右:すごい!これキンモクセイ入ってない?まか不思議、右の2煎目はキンモクセイの香りがします!

【3煎目】左が正宗鉄観音中火、右が正宗鉄観音軽火の茶湯。
左:むしろ2煎目より香りが濃厚、どうして?胃から香気がふつふつと湧きあがる感覚も!
右:さっぱり美味しいのですが薄くなってきました。

てきぱきとパッキングしているのは林茶師の奥様です。奥様は木柵鉄観音の神様「張約旦茶師」の娘さん。優しくてとっても働き者です。こういう奥様が茶葉をしっかり管理していますので、林茶師のお茶は保存状態も最高です。

「張茶師に是非お会いしたいんです、お願いします。」と私。林茶師からOKが出ました。山の上に住む木柵鉄観音の神様「張約旦茶師」に会いに行きます。車は右へ左へ交互に傾きながら山道を登りつめます。果たして張約旦茶師に会うことができるのでしょうか…?



珍夜特急  〜彩香の買い付け日記〜
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