室内萎凋(しつないいちょう)

(2001.4.台湾・阿里山 電脳茶師)

萎凋(いちょう)とは茶葉をしおれさせ、酸化発酵を促す作業です。烏龍茶の花や果実に例えられる『あの香り』の決め手となる作業なので、メチャメチャ重要であり、難しい作業です。
この萎凋には、外で作業する「日光萎凋」と部屋の中で作業する「室内萎凋」がございます。今回は「室内萎凋」です。茶葉を揉み込み、本格的に発酵を促します。えも言われぬ蘭のような香りが漂うのが特徴です!

   
前回では阿里山鉄道にひかれそうになってしまいましたが、私、天野真佐志!みなさんにおいしい中国茶を知っていただく前に逝ってしまうわけにはまいりません!
その後僕はある湖に行ってきました。この湖、1999年の、台湾大地震の時の地殻変動でできた湖なんですって!
さてさて、湖で釣りをしていたらいつの間にか時間が過ぎ、農家に帰ってきた頃にはもう日も暮れてしまいました。「あ〜疲れたぁ」なんて思っていると、農家の地下の製茶所からとんでもなく良い香りがしてきました。この香りは何??ジャスミン茶??ワァ〜メチャ楽しみ!!急げ♪B==┏( ・_・)┛地下に下りてきてみると、作っているのは烏龍茶でした!よくよく考えてみると、この忙しい新茶の頃にジャスミンを作っているはずはないのです。ただそれほどに、家の外まで花の蜜の香りが漂っておりました!人為的な香りではなく、自然の力で清い香りが立ち上る・・・。半発酵茶烏龍茶の奇跡はこの【室内萎凋(室内いちょう)】にありそうです。

それでは【室内萎凋(室内いちょう)】についてご説明いたします。日光にさらして乾燥した茶葉を、今度は常温の室内に放置し、茶葉の自然発酵、つまり酸化を促します。写真のように何重にも重ねることで、効率的に作業ができるようになりました。、大陸の方での製茶場では、まだ直径2メートルほどのザル上のものを敷き詰めます。時折り茶葉の絨毯を引き出し、かき混ぜます。どこまで発酵させるか?そしてどこで発酵を止めるか、それがとても重要。全ての茶葉が均一に発酵するように調整します。

もちろん手揉みです!この揉みこみの作業は、よりよい香りを作り出すための、とても難しい作業です。ここはそれぞれの茶農家の人たちの経験に依存する部分が大きいです。さてさて、この農家の社長を務める劉(りゅう)茶師!実はメチャメチャ日本語うまいんです。台湾人は年配の方ほど日本語を話される方が多いです。日本統治時代の名残りです。劉さん直々に茶葉の揺青(ヤオチン)、つまり揉み込み作業を教えて下さいました。

劉さん曰く、茶葉の扱いは愛情が重要だそうです!優しくかき混ぜてあげると、香りもうまく引き出せるのだそうです。そう、まるで赤ん坊をあやすようにするのだとか・・・。。愛情こもっているかな??(^_^;)
茶葉を揉み込むことで、茶葉を傷つけたり混ぜていきます。茶葉を軽く揺すったり、混ぜたりして、茶葉に目には見えない細かなキズをつけていきます(茶葉の形状が壊れるほどの大きなキズは決してつけません)。それにより、茶葉の発酵が促されます。

これには二つの意味があります。一つは茶葉を攪拌することで室内萎凋による発酵をむらなく進めること、もう一方は茶葉がこすれあうことで表面に目には見えない程の小さな傷がつき、これにより茶葉の(酸化)発酵を促進させることです。室内萎凋の最後の仕上げ、筒状の機械に茶葉を入れます。そして筒を回転させることで発酵を促します。とてもデリケートな作業です!
 
室内萎凋をした後の茶葉を見てみましょう〜♪茶葉からはまさに蘭の様な独特の香りが漂ってきます。酸化させるだけなのに、こんなに良い香りがするのには本当に感動します(@_@)/これこそ烏龍茶マジックです!この香り、絶対感動します!

一枚ピックアップしてみました。なんだかちょっと赤みがかっているのが解りますよね。これが酸化による発酵です。 
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茶摘み日光萎凋室内萎凋殺青揉捻


珍夜特急  〜彩香の買い付け日記〜
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